推しの舞台鑑賞記 1 ミュージカル刀剣乱舞「葵咲本紀」「歌合 乱舞狂乱2019」
舞台というと音楽関係の方に何かと縁があったのですが、3年前くらいから演劇、特に2.5次元の舞台を見に行くようになりました。そこで推しを演じていた俳優さんのことが気になり始め、出演作をいくつか見ました。生で見たのはまだ2つだけ、他は動画配信サイトなどでのものですが。
古いものですと数年前になるので今更な感じではありますが、どうしても語りたくなったのでまとめてみました。
ネタバレありですので、もし知りたくないという方はご注意を。
最初ということでまずは「推し」とは誰か?などの説明から。
ご存じの方には少々煩わしいかと思いますので、説明部分は飛ばして下さい。
「刀剣乱舞」(とうらぶ)というゲームをご存じでしょうか?
少し前にテレビでもよく取り上げられていたので名前くらいなら聞いたことがあるかもしれません。2015年1月にサービス開始したゲームですが、私が始めたのは2か月後の3月でした。
プレイヤーは「審神者」と呼ばれ、登場するキャラは日本刀の付喪神が人の姿をとった存在「刀剣男士」と呼ばれます。彼らを集め、出陣させて育成するゲームです。
日本刀というと短刀や太刀などを真っ先に思い浮かべるかもしれません。ですが、ゲーム中では他にも種類があります。脇差・打刀・大太刀・槍・薙刀・剣とこれだけあります。
私が好きなキャラは槍の「御手杵」です。彼について語り始めると話が尽きませんし、本題から外れますのでここでは簡単にご紹介するにとどめましょう。
槍としての「御手杵」は天下三名槍の一本として知られています。因みに他の二本とは「蜻蛉切」と「日本号」。この二本は現存していますが、御手杵だけは現存していません。昭和20年の東京大空襲で失われてしまいました。が、後年に有志の方の手で復元され、展示されているのでかつての姿を想像することができます。
刀剣男士としての御手杵は穏やかで優しく、近所にいそうなお兄ちゃんといった感じです。自分の主であるはずの審神者に対してもかなりフランクな接し方。同じ槍である蜻蛉切とは対照的です。口癖は「刺すしかできない」。御手杵は蜻蛉切や日本号と違い、刺すことに特化した形状をしていることからの発言でしょう。
とここまでがとうらぶ、及び御手杵についての説明。ここからが本題です。
とうらぶはゲームにとどまらず、アニメ・映画・舞台にミュージカルと様々なメディア展開をしていますが、ここでとりあげるのはミュージカル(刀ミュ)です。
毎年新作がかかるのですが、去年(2019年)の新作は「葵咲本紀」(あおさく)というサブタイトルでした。そこに御手杵が出ていたのです!最推しが出ているのだから是非生で見たい!と思い、運よくチケットがご用意されたので1公演のみでしたが見ることができました。
刀剣乱舞に限らず他の2.5次元の舞台に出ている俳優さんは皆そうですが、できる限りキャラに近づけてくれるんですよ。身長や体格などどうしようもないものもありますし、個人的には違和感のあるキャラもありました。ですが、御手杵に関しては違和感なし!
御手杵は公式設定では身長192センチですが、涼星さんは188センチ。かなり近いです。それに私が感動したのは声です!特に口調。公式の声優さんが吹き替えしているのかと思うほどによく似ていたのです。そう思ったのは私だけではなかったようで、他の方の感想でも散見されました。
それに性格。アドリブと思しき場面でもすごくらしいんです。御手杵ならこう言いそうというセリフや動きはこれまた感動もの。芯からなりきっていないとこうはいきません。
とここまでが前置き。長くてすみません。まずはあおさくの話から
これは2017年の新作公演「三百年の子守唄」(みほとせ)の続編にあたります。こちらから説明しないとわかりにくいので、絡めながらあらすじを紹介します。
みほとせの冒頭、遠征先の三河で刀剣男士たちは松平家の当主・松平広忠と家臣たちが歴史遡行軍に惨殺される場面に遭遇するところから始まります。ちなみに歴史遡行軍とは刀剣男士たちの敵・歴史修正主義者たちの軍勢のことです。
このままでは歴史が変わってしまいます。ですが、幸いにも跡継ぎの竹千代(のちの徳川家康)は生き残りました。そこで刀剣男士たちは松平家家臣に成り代わり、竹千代を育てることに。長い月日の後、徳川家康の最期を看取るところで終わります。
そしてあおさくに繋がります。
これは関ケ原の前哨戦と言われる会津征伐に徳川家康が出陣し、今の栃木県小山に陣を張ったところから始まります。みほとせから引き続き蜻蛉切と千子村正という二人の刀剣男士が出ています。
今回の敵の狙いは家康の次男である結城秀康。彼は兄・松平信康亡き後は徳川家を継ぐ立場のはずでしたが、なぜか外されてしまいます。そのことに不満をもっており、そこを敵に利用されてしまいます。いわゆる闇落ちしかけるのですが、刀剣男士たちの活躍でことなきをえるのです。
さて、あらすじで説明した登場人物に結城秀康という人物がいます。彼は御手杵の元の主です。結城家に婿養子に入った際に義父の結城晴朝(この人が御手杵を注文した人です)から御手杵を譲られました。
となるとがっつり絡むのか?と思ってしまいますよね?それが絡まないんですよね…。
むしろ秀康の双子の弟である永見貞愛の方といい感じのかけあいをするんですよ。よき喧嘩相手というかなんというか。彼らのやりとりがこれまた面白い!
第一印象は最悪な感じですが、やむを得ず行動を共にする間に少しずつ仲良くなっていきます。もうちょっと一緒にいられればきっと親友同士のような関係になれたのかもしれません。
ゲーム中での御手杵は戦以外のことに興味がなさそうな感じですが、刀ミュでは感情の起伏がはっきりしていて実に人間味に溢れています。その変化は激しいものではなく、あくまでも穏やか。そこにいるだけでほっとするような空気感です。それは涼星さんの素の性格からくるもののような気がします。
だとすればまさにはまり役。御手杵が目の前にいる!動いてしゃべっている!
…と感激したものです。
殺陣に関しては初めてではなさそうなのですが、槍はこれが初めてだったようです。長くて重い槍を振り回すに苦労したそうですが、様になっています。手足が長いこともあってすごくダイナミックなんですよね。
ただ、他の人に当たると大変なので、そのあたりは大変だったんじゃないかな?窮屈な思いをしたかも…。
ミュージカルなので当然歌とダンスはあります。刀剣乱舞のミュージカルでは前半のお芝居メインのパートと後半のライブにわかれます。前半ではメインで歌う場面があっても比較的短くてそれが残念!後半でもソロはありませんでした。次は是非たっぷり聞いてみたいものです。
ダンスはもうキレッキレ!見ていて気持ちがいいほどです。で、ここでの注目ポイントは手です。お芝居の時でもそうですが、手というか指の動きが美しい。すっとのびた指の形のなんと綺麗なこと!顔の次くらいには見惚れてしまうほどです。
それと、涼星さんについて必ず言われるのが足の長さ。なんと股下97センチという驚異的な長さ。ライブパートでのことですが、階段を五段ぬかししているんです!一般人ならせいぜい二段か三段くらい。初見時に目を疑いました。ええ。アーカイブ配信でも見ることができますし円盤にも収録されているはずですので、気になった方は要チェック!
さて、次は「歌合 乱舞狂乱2019」(歌合)についてです。
毎年12月頃、刀ミュに今まで出演した刀剣男士たちが集まるお祭りのような舞台があります。2018年までは「真剣乱舞祭」(らぶフェス)と言いましたが、2019年は「歌合 乱舞狂乱」のタイトルでした。
私が見たのは東京公演で、大千秋楽の前日の夜公演でした。
8つの短い物語(芝居)とその合間にこれまでの公演のライブパートの歌が歌われるという構成です。殺陣はほぼなく、本丸での日常風景が描かれています。
本公演では見られなかった衣装や普段の様子を見られるのが醍醐味の一つ。ゲーム中でいう「内番着」、要するに普段着をここで初めて目にしました。
御手杵の内番着って芋ジャーなんですよ。インナーは赤いTシャツで、これは戦に出かける時と同じもの(多分)。緑のジャージで、上着の胸には「御手杵」の名前入り。デカデカと名前が入っているのって御手杵ともう一振り、刀ミュには出ていないけど「不動行光」という短刀だけ。どちらも同じ絵師さんなので、これは絵師さんの趣味なのかな?
芋なんだけど…着ている人がスタイル良すぎるせいで芋に見えません。
ライブパートの衣装はあおさくのもの。複数公演に出演した刀剣男士の場合は最新作のものを着ていました。なので蜻蛉切もあおさくの衣装でした。
出演している刀剣男士が多いこともあり、御手杵の出番はあおさくの時ほど多くはありませんでした。残念ですが仕方がありません。ですが、よくよく注意してみるとけっこう意味深な役割を担っていたりするんですよね。
最初の物語では碁石が擦れ合う音が何に聞こえるかという話から始まります。霰が降る音、鉛玉がはぜる音、そろばんの音…などなど皆が口々に言います。ところが御手杵はその音に気が付いていながらそれが何に聞こえたか言わない。言いかけたところで篭手切江に引っ張られて退場してしまうからですが。
そして最後の場面。
刀剣男士全員で舞い踊り、新たな刀剣男士を召喚しようとしているところ。左右の二手に別れて呼びかける(歌う)のですが、その時の歌詞に「こちらへ こちらへ さあ!さあ!」という部分があります。その呼びかけをしているのは全員ではなく、御手杵と陸奥守吉行。この二口にはある共通点があります。
それはどちらも燃えたことです。陸奥守吉行はかの坂本龍馬の愛刀。函館での大火災に巻き込まれた際に焼けてしまいましたが現存しています。
そしてそれは最初の物語で御手杵にはあの音が何に聞こえたか、という答えにも通ずるものがあります。あの時、振り返った御手杵の表情は強張っていたように見えました。それは他の刀剣男士たちの表情とは明らかに違うもの。いつも穏やかで明るい御手杵としては珍しい表情です。よくよく見ていないと見逃してしまいそうですが、あまりに異質なので記憶に残ったほどです。
答えはおそらく火が燃えるパチパチという音、もしくは空から焼夷弾が降ってくる音ではないでしょうか。だとすれば辛い…。
あおさくの時もそうでしたが、ご用意された席は前方の左側でした。端ではありませんでしたが比較的通路に近い方でした。この時は男士たちがけっこうそばを通っていったのですが、御手杵は3回も通ったんですよ!もう嬉しくて嬉しくて(泣)。あおさくの時は一度も通ってくれなかったから余計に嬉しかったですねえ。
演劇でも音楽でもやっぱり生が一番いい。
役者さんたちの熱が感じられるし、回替わりのアドリブなどもあるから何度でも楽しめます。お財布が許せば、チケットが手に入るなら一回と言わず何度でも見ることをオススメします。
なんか感想というよりは紹介の方が多くなってしまい、すみません(汗)
ともあれ、これで私の中では田中涼星さんが一気に注目株に。
過去の出演作を探し、配信されているものに関しては見て雑誌に記事が載っていると聞けば買いました。
いい年して、と思わなくもないですが目が離せないんですよね。
これからも彼の舞台を見たい!2.5もいいのですが、ストレートも見てみたい!
その時、どんな演技を見せてくれるのか楽しみです